長野県駒ケ根市で公衆トイレが相次いで壊された事件を見て、「犯人は外国人なのか」と気になった。少なくとも私が確認した報道では、警察は器物損壊事件として捜査中で、犯人の国籍は公表されていなかった。外国人による事件だと断定できる材料はない。
出典:J-CASTニュース「便器12基が破壊、洗面台や鏡も…公衆トイレ5か所で被害」
そこで、個別事件の印象ではなく、もう少し大きな問いを考えてみた。
外国人や移民が増えると、日本の犯罪率や治安は本当に悪化するのか。
先に私自身の立場を明記しておく。私は、現在の日本で移民受け入れを積極的に拡大することには反対だ。ただし、それは「外国人は犯罪を起こしやすい」と決めつけたいからではない。むしろ、移民政策に反対するからこそ、都合のいい数字だけを拾わず、犯罪統計が実際に何を示しているのかを確認しておきたい。
本稿では「外国人」と「移民」を同義には扱わない。統計上の外国人には永住者、留学生、就労者、短期滞在者など異なる集団が含まれる。本稿でいう「移民受け入れ」は、主に日本で中長期的に生活・就労する外国人の受け入れを政策として拡大することを指す。
まず、単純比較では外国人の検挙率は日本人より高い
公益財団法人日立財団の「外国人が増加すると治安が悪化するのか? 犯罪統計による検証」は、警察庁の犯罪統計などを使って2023年の日本人と外国人を比較している。
交通業過を除く刑法犯について、人口1,000人当たりの検挙人員は、日本人が1.47人、外国人が2.39人だった。凶悪犯では日本人0.04人、外国人0.08人である。
| 2023年 | 日本人 | 外国人 |
|---|---|---|
| 刑法犯検挙人員/人口1,000人 | 1.47人 | 2.39人 |
| 凶悪犯/人口1,000人 | 0.04人 | 0.08人 |
この数字だけを見れば、外国人の方が高い。ここを無理に否定する必要はない。
ただし、この比較には大きな注意点がある。外国人人口は日本人より20〜30代に集中しており、日本人は高齢者の割合が高い。犯罪の検挙率は日本人の中でも年齢によって大きく違うため、年齢構成が全く異なる二つの集団をそのまま比較すると、国籍以外の差まで拾ってしまう。
出典:日立財団「外国人が増加すると治安が悪化するのか? 犯罪統計による検証」
年齢構成を補正すると「約1.6倍」ではなく「約1.3倍」まで縮む

同分析では、日本人の年齢別犯罪率を外国人の年齢構成に当てはめ、「もし外国人が同じ年齢の日本人と同じ犯罪率だったら、何人が検挙されるはずか」を推計している。
その結果、外国人の刑法犯検挙人員は推定6,870人に対し実績9,004人で、約1.3倍。凶悪犯も推定234人に対して実績314人で、やはり約1.3倍だった。
つまり、年齢差だけで全てが説明できるわけではない。年齢を考慮しても外国人の検挙率は高めに出ている。
一方で、素の人口比で見た「2.39対1.47」という差を、そのまま「外国人は約1.6倍犯罪を起こしやすい」と読むのも不正確だ。年齢構成を考慮すると差はかなり縮む。
さらに、公表統計だけでは外国人について年齢・性別・所得・職業・在留資格・居住地域などを完全にそろえた比較は難しい。残った差を、そのまま「外国人であること」が原因だと断定することはできない。
「外国人が増えたから日本の治安が悪化した」とも言い切れない
同じ日立財団の分析では、1990年代と比べて外国人人口は大きく増えた一方、2023年の外国人刑法犯検挙人員は1994年より少ないと整理されている。
これは少なくとも、「外国人が増えれば、それに比例して犯罪も増える」という単純な説明とは整合しない。
また、年齢調整後の外国人の犯罪率は、日本国内の都道府県間で見られる犯罪率のばらつきの範囲にも収まるとされる。国籍だけで治安を説明するのは、かなり粗い見方だと思う。
一方で、警察庁が示す「来日外国人犯罪」特有のリスクも無視できない
ここまで読むと「では外国人犯罪は心配する必要がないのか」と感じるかもしれないが、それも極端だ。
警察庁の2025年版警察白書によると、2024年の「来日外国人」による刑法犯の検挙件数のうち、共犯事件の割合は41.1%だった。日本人は12.5%で、約3.3倍となっている。万引きでは来日外国人22.6%、日本人3.4%だった。
警察庁は、来日外国人犯罪について、出身国・地域別の組織化、多国籍の構成員による役割分担、SNSを通じた犯行、地下銀行、不法就労助長、偽装結婚、旅券・在留カード偽造などの犯罪インフラにも言及している。
ただし、ここでいう「来日外国人」は外国人全体ではない。警察庁の定義では、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者などの定着居住者は除かれている。したがって、この共犯率を「日本に住む外国人全体」の特徴として扱うのも誤りだ。
出典:警察庁「令和7年版警察白書 第4章 来日外国人犯罪の情勢」
「外国人」と一括りにすると、本当に見るべきものを見失う
外国人という括りの中には、長年日本で暮らしている永住者もいれば、留学生、就労者、短期滞在者もいる。生活基盤も在留資格も所得も日本語能力も全く違う。
さらに、警察庁の「来日外国人犯罪」と在留外国人人口をそのまま割って「外国人犯罪率」を計算することも適切ではない。統計の対象となる集団が一致していないからだ。
最新の警察白書統計でも、来日外国人について国籍別の刑法犯・特別法犯の推移が継続的に公表されている。こうした数字は監視すべきだが、母集団や定義を確認せずに比率だけを切り取ると、結論を誤る。
それでも私は、移民受け入れの拡大には反対だ
ここまでの数字を見れば、私が移民に反対しているからといって、「外国人が増えれば犯罪が増える」と断定するのは無理がある。
それでも私は、現在の日本で移民受け入れを積極的に拡大することには反対だ。
理由は、犯罪率だけで移民政策を判断すべきではないと思うからだ。
移民政策は、一度受け入れ人数を増やせば終わりではない。雇用、住宅、教育、日本語、医療、地域コミュニティ、行政手続き、在留資格の管理、悪質な雇用主やブローカーへの取締り、ルールを守らない場合の法執行まで含めて初めて成り立つ。
私は、これらの制度と社会的な受け入れ能力が十分かを確認しないまま、「人手不足だから」という理由だけで受け入れ規模を拡大していくことには慎重であるべきだと考えている。
これは「外国人だから危険」という話ではない。
受け入れるなら、人数を増やすことより先に、ルールと管理体制を整備するべきだという考えだ。
反対する側こそ、データを正確に使うべきだと思う
移民政策に賛成する人にも反対する人にも、それぞれ理由がある。
ただ、反対意見を説得力のあるものにしたいなら、外国人が関与した事件だけを集めて「やはり外国人は危険だ」と結論づけるべきではないと思う。
今回の長野県のトイレ破壊事件もそうだった。少なくとも確認した報道では犯人の国籍は公表されていない。それを外国人犯罪の事例として扱えば、自分の主張に都合のいい推測を事実に変えてしまう。
逆に、「外国人犯罪を心配すること自体が偏見だ」と片付けるのも違う。年齢を補正しても検挙率には差が残り、警察庁が組織犯罪や制度悪用について具体的なリスクを示しているのも事実だ。
私の結論はこうだ。
外国人の検挙率は単純比較では日本人より高い。年齢を考慮すると差は約1.3倍まで縮むが、完全には消えない。一方、外国人人口の増加そのものが日本全体の治安悪化を引き起こしているとは、現在の統計からは断定できない。
その事実を認めたうえで、私は移民受け入れの拡大には反対する。
「外国人だから」ではなく、受け入れ人数を増やす前に、制度、法執行、社会統合、地域の受け入れ能力を整えることを優先すべきだと考えるからだ。
移民について議論するなら、賛成・反対どちらの側も、感情的な事件の印象ではなく、同じ統計と同じ事実を見たうえで議論した方がいい。
参考情報・出典
- J-CASTニュース「便器12基が破壊、洗面台や鏡も…公衆トイレ5か所で被害」(確認日:2026-10-06)
- 日立財団「外国人が増加すると治安が悪化するのか? 犯罪統計による検証」(確認日:2026-10-06)
- 警察庁「令和7年版警察白書 第4章 来日外国人犯罪の情勢」(確認日:2026-10-06)
- 警察庁「令和8年警察白書 統計資料」(確認日:2026-10-06)



















